東京フルスロットル

英語と地理と歴史を駆使したコンテンツが好きだったんですがもう仕事に毒されてしまったのです。

【前編】食べログはGoogleマップに駆逐されてしまうのだろうか(初心者向け)

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食べログに口コミを投稿すると条件に応じてTポイントが獲得できるというのは有名かもしれません。実はGoogleマップにも口コミ投稿すると特典が得られるのをご存知でしたか? 個人的にはGoogleマップからもらえる特典の方に大きな魅力を感じるのですが、みなさんはどうでしょう?

   

 

タイトルはいささか刺激的過ぎるかとは思いますが、Googleマップのヘビーユーザーとしてはこの仮説をぶち上げたくなってしまうのです。"Google"が一般動詞としての地位を獲得しつつあるだけでなく、Googleマップでも必要な情報のほとんど得られるようになっているのです。特にグルメや宿泊などの娯楽において。

その一方でGoogle検索で「表参道 ランチ」と入力すればだいたい上位検索結果は「食べログ」などのグルメサイトだったりしますね。食べログのアプリのインストール数は100万を超えていますので、その認知度はパズドラに匹敵するかもしれません。

  

そんな巨大サービス同士の仁義なき闘いがこれから勃発するのか否か、そもそもなぜそんな闘いの勃発を予想したのかということについて見てみましょう。

 

Googleマップが食べログの代わりになる?

「渋谷 寿司」などとGoogle検索をかけてみると、まずは最上位に地図とお店候補がでてきます。そこではお店の外観などの写真やレビュー、営業中かどうかの情報が素早く入手できるようになっていますね。

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そして検索結果として最初に表示されるのは食べログのコンテンツ。食べログに限らずグルメ系のサイトが次々と検索結果の上位を争っている印象です。

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でも待ってください。「渋谷 寿司」と検索をかけたところ、食べログなどのグルメ系サイトに行かなくてもすぐに評価や場所が表示されていますね。仮に俺が食べログのユーザーだとしても、Google検索を利用して調べた場合は食べログ以外の評価などの情報がまず最初に目に入るわけです。もしこの評価や場所、さらに詳細な情報が信憑性を担保されるとしたら、食べログのサイトに行く前に「どこの店に行くか」という意思決定の段階に入ってしまいやしませんか?必要な情報に一度触れているので、少なくとも食べログのサイトを訪問したいという動機が薄れると思いませんか?

 

どちらも口コミ投稿すれば特典がもらえる

記事冒頭にもあるように、食べログやGoogleマップに投稿した口コミには「ご褒美」がもらえるようになっています。それぞれ見てみましょう。

食べログのご褒美

食べログに200文字以上の口コミを投稿すると、Tポイントが20ポイントが付与されます。また、食べログ未登録のお店を新規登録すると10ポイントがもらえるそうです。(出典:http://tabelog.com/campaign/point/tpoint.html

Tポイントの普及はすこぶる進んでいるので、投稿することでTポイントが貯まるというのは大きな動機になり得るかもしれません。単純計算11回投稿すればドトールでブレンドコーヒー1杯を楽しめるということですからね。飲食チェーン以外にもコンビニやYahoo!などでもTポイントを積極的に導入していますから、使い勝手の良い、嬉しいポイント付加制度かもしれません。

 

Googleマップのご褒美

個人的にはこちらの方が嬉しいです。Googleマップの口コミ等の投稿特典はスタンプカードのようになっており、5段階のグレード分けになっています。その等級が上がればあがるほど魅力的な特典が付加される仕組みとなっています。

レベル1 (ローカルガイド登録後)

     

    1. ローカルガイドの月刊ニュースレターでさまざまな情報を入手できます。
    2. Google 主催のワークショップやハングアウトに参加できます。
    3. メンバー限定のコンテストに参加できます(一部の国のみ)。
    レベル2 (5ポイント) 
    1. Google の新しいサービスや機能を一般リリース前に試用できます。
    2. 交流会を企画し、ローカルガイドのカレンダーで宣伝できます。
    レベル3 (50ポイント)
    1. Google マップでローカルガイド バッジが表示され、存在感をアピールできます。
    2. Google+ の限定コミュニティで他のメンバーと交流できます。
    3. ローカルガイド コミュニティのチャンネルを作って、メンバー間の交流を深められます。
    4. Google が主催するイベントに招待されます(一部の都市のみ)。
    レベル4 (200ポイント)
    1. Google ドライブ ストレージを無料でアップグレードできます。
    2. 「注目のローカルガイド」として紹介される可能性があります。
    レベル5 (500ポイント)
    1. Google 社員と同じように新サービスを一般リリース前に試用できます。
    2. レベル 5 ローカルガイド サミットへの参加を申し込めます。

    (参照:https://www.google.com/local/guides/benefits/)

    この特典の中で最も魅力的なのはGoogleというコミュニティのなかに入ることができるのと、Googleドライブ(icloudやDropboxの類)のストレージがアップグレードされること、そして「ローカルガイド」としての名声を得られるということでしょうか。ちなみにGoogleドライブは1TBにまで増量されるそうです。よだれが止まりません。

    でもどうやってポイントを獲得してレベルを上げればいいのでしょうか?必要なポイントを得る手段は以下の通りです。

    どのタイプでも 1 ポイントが付与され、1 件の場所につき最大 5 ポイントを獲得できます。たとえば次のようになります。

    • 同じ場所の写真 1 枚以上をアップロードする = 1 ポイント
    • 同じ場所の写真 2 枚 + クチコミ 1 件をアップロードする = 2 ポイント
    • 5 つの異なる場所の 5 件のクチコミを投稿する = 5 ポイント
    • 同じ場所についてのローカルな質問に 1 件以上回答する = 1 ポイント
    • 同じ場所を 1 回以上編集する = 1 ポイント
    • 新しい場所を追加する = 1 ポイント
    • 出典:https://support.google.com/local-guides/answer/6225851?hl=ja&ref_topic=6225845

    つまり地道に投稿数を重ねて、Googleの信頼を勝ち取っていくことで「ご褒美」への道は開けています。しかも投稿対象は世界中です。 

    それにしても食べログの「ご褒美」がお金に換算可能な「有形で実利的」なのに対して、Googleマップのローカルガイドはコミュニティー形成やらGoogleへのコミットメントなど、「抽象的で無形的」なんて特徴が伺えますね。

     

    食べログの強み

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    ここまでGoogleマップの口コミ投稿についてちょっと偏り気味に字数を割いてしまいました。こうしてみると食べログの「ご褒美」制度はちょっとシンプルで味気ないような気がしますね。けれども食べログにも「ご褒美」以外の点で大きな強みが2つあると思います。

    1. 先駆者としてのポジション

    食べログは2005年にサービスをリリースしました。それから10年以上もサービスを拡大しつづけ、いまや一般ユーザーからもお店側からも相当な認知度と影響を認められています。ちなみにGoogleマップが産声をあげたのも奇しくも2005年ですね。

    食べログはグルメ口コミサイトとして着実に飲食・グルメのネット市場を制圧していった一方、Googleマップの方は着実に無料オンライン地図の最有力として成長していきました。それぞれがそれぞれのフィールドで覇を勝ち取ろうとしていたのです。

    GoogleマップやGoogle検索でも飲食店の評価が表示されるようになったのは最近のことです。Android版のGoogleマップでは「現在地付近の飲食店」というサービスが加えられましたが、参照記事自体が2016年になってからのものです。もはやグルメサービスが飽和状態に差し掛かり、食べログがその覇を取り終えて、あらたなグルメサービスが成長し始めている時期でした。

     

    ちなみに2012年には食べログの巨大な影響力がお茶の間を賑わせることとなりました。口コミ改ざん騒動です。食べログの口コミ一つでお店への客足が左右されてしまうほど、このサービスがすさまじい影響力を身につけていたのです。その一方でGoogleでも地図のデータ改ざん、さらには「Google村八分」として検索結果に表示させないという「天罰」が話題になっていったのと様相が似ていますね。

    現状の普及具合を見るに、やはり先行者としての食べログに軍配があがりそうです。

       

    2. SNSやコミュニティとしての機能

    食べログではただ一般投稿者の口コミだけで成り立っているわけではありません。この界隈にも少数ながら有力者の存在があります。

    「食べログレビュアー」として盤石な実績を築き上げてきた人達のことです。彼らの口コミ投稿はそれまでの口コミ投稿数や信頼性に根拠があります。その素晴らしい口コミが多くの一般ユーザーの来店や食事を誘発し、一般ユーザーの彼らにさらに評価を促し、そんな評価がまた別の人々を呼び込んで行く。この流れを形成しているorしてきたのが「食べログレビュアー」です。

    食べログではお気に入りや人気のレビュアーをフォローすることができます。つまり彼らがどんなところで何を食べたのか、さらにはどう感じたのかという点まで追いかけることができるのです。これってもはや一種のSNSではありませんか?そしてお店・ユーザー・レビュアーという三者が巨大なコミュニティーを作り上げていき、現在のアプリダウンロード数はAndroid版だけでも100万を超えるに至ったのです。

     

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     Googleマップと食べログの比較とまとめ

    ここまで、Googleマップに口コミ投稿する際の特典内容と、食べログというサービスの持つ強さとを重点的に書いてきました。俺が思うに、いかに巨大なサービスたるGoogleおよびGoogleマップだったとしても、食べログのグルメ牙城を崩すのはそう容易くいかないんじゃないかなと考えています。

    食べログはグルメ系サイトとしてのポジションをいち早く固めたことをまずは挙げました。その影響力が食べログの口コミ自体を歪めてしまいかねないことで、一時期「共食い」状態を形成するほどの力を持ちました。

    そして食べログはグルメ界隈の著名人による「レビュアー」制度を作ることで「食べログコミュニティー」なるものを作り上げました。こうしてサービス自体もどんどん成長させていくことに成功したのです。

    対するGoogleマップは追い上げのための施策を展開中です。グルメやスポットに関してより多くの評価や口コミを掲載するための「ご褒美」制度を設け、それと並行するようにGoogleのコミュニティーに投稿者を巻き込もうとしている意図が見えます。そして著名な「ローカルガイド」を育成し拡大していくために「ローカルガイド」の中だけでなく、本家本元のGoogleの新サービスにいち早く触れられる仕組みを設けています。Googleマップは食べログが試みたコミュニティー化にいち早く近づこうとしている印象を受けます。

    SNSとしてGoogle+なるものが存在しますが、日本でのユーザー数はFacebookやTwitterなどに比べると少なく、その存在感は希薄かもしれません。ですのでコミュニティー化という点において今後Googleがどんな手段を取るのかは注目したいところです。 

    つまるところ、「まだ」Googleマップが食べログを脅かすという自体は近くない未来の話かもしれません。

     

    【後編】ではGoogleマップと食べログの「依存関係」についてちょいと考えたいと思います。

     

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