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英語と地理と歴史を駆使したコンテンツが好きだったんですがもう仕事に毒されてしまったのです。

【後編】食べログはGoogleマップに駆逐されてしまうのだろうか(web興味ある人向け)

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食べログとGoogleマップのローカルガイドというサービスが仁義なき闘いを繰り広げてるor繰り広げつつあるとして前回記事を投稿しました。どちらにも口コミ投稿「ご褒美」制度があるものの、その内容は全く対照的。さらに食べログがどのようにユーザーを囲い込み、サービスとして成長して行ったのかという点をGoogleマップの施策とを絡めて述べました。

 

【前編】の結論としては「食べログがGoogleマップに駆逐されることはまだ起こり得ない」としました。今回は【後編】ということですが、その結論はもしかしたら違ったものになる可能性もあります。というかなります。

 

 

今回は食べログとGoogleマップ(Google)が実は依存関係にあるんじゃないかという観点から見ていきましょう。ずばりお金の話です。

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 食べログはGoogle Mapsの世話になっている?

実は食べログのコンテンツ、Google Mapsを利用したものが含まれているんですね。これが何を意味するかというと、

  1. 食べログの利用者が増える→直接的にGoogleが儲かる
  2. Googleマップユーザーの増加→間接的にGoogleが儲かる

ということを意味しています。つまり食べログのサービスが成長するか、Googleマップの認知度が上がれば、食べログはGoogleにどんどんお金を払わなければいけなくなるんですね。

では1から詳しく見ていきましょう。

1. 食べログの利用者が増える→Googleが儲かる

Googleは、個人や企業がGoogleマップの機能を自分でカスタマイズしてアプリやWebの機能を充実させるためのサービスを展開しています。これによってアプリやWebサイトのコンテンツとしてGoogleマップの便利で手慣れた機能を搭載させることができます。これがGoogle Maps APIsと呼ばれるものです。

食べログはこのGoogle Maps APIを利用している(ブラウザChromeの拡張機能で確認可能)のです。このMaps APIを利用するにあたって、無償版と有償版というものがありますが、食べログのような巨大なサービスとなると、規約上Google Mapsの豊富な機能を実装するのに、Googleに課金される仕組みとなっています。それは膨大な数の利用者のため、APIへのリクエスト回数(食べログサービス内でGoogleマップのような機能を使う回数)増えるためです。

 

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具体的には上のような画面です。Googleマップを食べログのサイト内で使っていることがわかるでしょう。しかしサイトには食べログに投稿されたお店、それに関する評価や情報だけが掲載されています。GoogleマップのようでGoogleマップにあらず。これがGoogle Maps APIを利用したコンテンツです。

ユーザーはこのマップを頼りに、地図上に表示された情報を自分の所在地や現在地にもとづいてより直感的に選択し、情報収集ができるというメリットを享受できます。

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ちなみにこうしたGoogleマップ関連のサービスは今をときめくAirbnbやExpediaといったサービスでも利用されています。利用者の数、正確にはGoogleマップのような画面で、ユーザーはGoogle Mapsコンテンツを何度利用したのかということで、食べログはじめAirbnbやExpediaは課金されます。利用者の多いサービスですので相当な金額がGoogleに支払われていることでしょう。

 (参照/詳細:https://developers.google.com/maps/pricing-and-plans/?hl=ja

まとめます。食べログはGoogleマップ関連のサービスを取り入れていますが、規約上はその利用者の数によって課金される仕組み。したがってアプリダウンロード数だけでも100万を超えてしまう巨大サービスですから、webブラウザ利用を合わせると、食べログは相当な金額をGoogleに支払っていると考えられます。これが食べログの成長がGoogleを儲けさせる、と記述した意図です。(※正確な金額は分かりかねます。)

 

2. Googleマップがさらに利用される

Googleマップは月間アクティブユーザー数が全世界で10億人を超える巨大なサービスです。Googleのサービスが中国で利用できないことも加味すれば、どれだけ多くの国と地域に普及したサービスなのか想像もつきません。

こうした「超一般的」なサービスの利用がエンドユーザーの裾野をさらに広げていったとすれば、地図を利用したコンテンツ等において、ユーザーがGoogleマップの仕様に慣れているのは言わずもがな。ですのでユーザーはGoogleマップに類似または同等のコンテンツにこそ親しみと使い勝手を覚えるはずです。

  •  Googleマップがグローバルなサービスとしてその地域の市民権だけでなく永住権まで取得したとしら。
  • ユーザビリティの向上のために、膨大なデータがリスト形式ではなく現在地や予定滞在地から次の目的地となる店舗や施設へのルートが選べるとしたら。
  • 店舗や宿泊施設に関する膨大かつ「適切」な検索結果に人々が慣れ親しんでいるとしたら。

このような背景もあり、少なからぬ企業やサービスがGoogleMapsの導入を検討していることでしょう。俺個人としても、食べログでお店を調べる場合はリスト検索よりもマップ上で場所や距離感を元に情報収集するようにもなりました。待ち合わせや駅からの距離が予算よりも重要な観点になるときは特に。

Googleマップと同様の使い勝手を享受しているユーザーが増加すれば、現在の食べログにあるようなGoogleMapsコンテンツの利用頻度はどんどん向上していくことでしょう。つまりGoogleマップの普及と使い勝手の向上が食べログやAirbnbのマップコンテンツの使用をさらに促し、結果的にGoogleを潤すこととなる可能性があるのです。

   

Googleマップだけでなく様々な領域にGoogleが顔を覗かせいてる

少し話は逸れます。現在、検索などの情報収集だけでなく、Googleマップ、ブロガーの方で利用している人が多いことでしょうAdsenceやAnalyticsなど、挙げればきりがないほど様々な「畑」にGoogleが存在感を示しています。

 

世界中のスマートフォンにはやはりAndroidが搭載されていることは周知の事実。さらに驚くべきことに、Android OSは某カラオケのデンモクにも搭載されていますし、とあるAndroidエンジニアは「そのうち家電にもAndroidが搭載されるかもよ?」なんて冗談なのか本気なのかも分からぬ発言をしていました。

 

さらにGoogleは自動運転車両の実現にも相当な熱量を持って取り組んでいますね。これは人工知能の開発と表裏一体であることも広く知られています。いまや家電だけでなく車を含めてあらゆるデバイスの心臓となりつつあるAndroidも、Googleの主力事業。もはやGoogleの手がける領域の拡大は留まることを知らないかのようです。

 

まとめ

前編と後編の二本立てで、食べログとGoogleマップの仁義なき闘いの行く末について考えていきました。 前編の段階ではまだ食べログに分があるとしました。今回の記事で改めて浮き彫りにしたかったのは「食べログとGoogle(マップ)の依存関係」について。

Webの領域において食べログはGoogle検索に依存し、一部のGoogle Mapsコンテンツを費用をかけてカスタマイズしてユーザーに提供しています。

アプリの領域においてもGoogle Mapsの機能を搭載しています。それにアプリを配信するのにGoogleやAppleのプラットフォームを利用しなければなりません。つまり食べログの少なからぬ部分が、Googleとの関係を軽視することができなくなっているのです。

 

その一方でGoogleは食べログはじめ様々なサービスから収益を上げていますし、ことグルメ系の検索において、Googleは食べログの巨大なコンテンツを無視するには無理があるのです。このように日本で認知度の高い巨大なサービス同士が、お金とサービスとを交換させながら互いを相互補完しているのです。

 

とはいえその依存関係が幾分あるいはそれ以上に偏りを見せつつあることが考察できます。Googleマップの母体であるGoogleには様々な情報が集められると同時に、それがGoogleマップの充実に還元されています。情報網羅性とその情報出力の適切さが目に見えて向上していく現在、 食べログが「Googleとは相対的にニッチな守備範囲」を固めてメリットや機能性を向上させなければならいでしょう。さもなくばガリバーのように巨大化しているGoolgeマップが大ナタを振ってくる日も近いかもしれません。現にその段取りは整いつつあるとも考えられるのです。

 

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