東京フルスロットル

英語と地理と歴史を駆使したコンテンツが好きだったんですがもう仕事に毒されてしまったのです。

ゆとり新卒のやる気のなさがむしろ会社に貢献してたらしい

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いやー、すげえこと聞いたわ。こんな方法があったのか。めっちゃ会社に貢献してるやん。今じゃめっちゃ社畜やん。実践したくてもできないけど友達の代わりに吐くわ。

 

 

 

とりあえず俺の友達、入社したわいいんだ、小さい会社ね。若い会社で厳密には定義違うけど「ベンチャー」とか言われるようなサイズ感ね。

 

んで、彼と久しぶりにあったんだ、1年弱くらいぶりにね。いまとは違って、いかにもやめたそうな雰囲気を入社直後に醸し出してたんだ。それだからさ、まだ会社で消耗してるの?wって煽ってみた。それに対しおれの方は、おいらはふつーに学生生活で消耗してるよwって言おうとしたんだけど、意外な答えがすぐ返ってきてさ、しかもその内容にひっくりかえった。まだ会社で貢献してるよ。って。

 

いや、察するに会社都合でやめたいなとか思ってるんじゃないかとか思ってたので。クビになるの待ってたのかなって。自己都合とか退職理由とか正直全然わかんないけどね。でも違うんだ。

 

「なんかね、ただやめるのっておもしろくないんじゃねって思ったのさ。だから、めっちゃゆとりっぽく、クッソ使えないキャラでいこうと思ったんだ。そしたら合法的に給料泥棒できるし、解雇されたらさいこーじゃん?」

 

「いや、すげえ不満だったんだよ、おれみたいな指示待ちキャラじゃなんも動けないしどうしていいか分かんないのに、そもそも業務の手引きみたいなのがなくてさ」

 

「そしたら結果的にさ、そういう手引きってかマニュアルってか仕組みみたいなのがどんどん出来上がってさ」

 

「なんかおれもがんばろうとか思えてきちゃったのさ」

 

ふむふむ、くそチャラくそ大学生が開眼して「意識高い系(笑)」の過程を経ずに意識高くなっちゃったかのような雰囲気がしてきて冷や汗をかいた。煽るに煽れないほどの進化スピードなんだろな、音速で変体したのかな。まあ、ここまで聞いてくるといま彼が何をどうがんばってるのかってよりも、どんなことで会社にある種の貢献を果たしたのか気になってきたんだ。だからいまとりあえずその2つを吐くわ。

 

 

1. 電話応対?しないよ、だれかとるっしょ

入社してすぐ、有って無いような研修を終えた彼はすでにこのスタンスを確立したいと思ったらしい。そんなことできんのかとは思うけども、さすがに先輩やらに「電話でろよゆとり」みたいな調子で言われたらしい。そこで彼はこう言い放った。

「新人向けの電話応対のマニュアルとかないんすか?」

これを言うにはさすがに勇気が必要だったらしい。言われなきゃ、しかもマニュアルがなきゃ何もできない新人君がついに完成し、完成披露試写会という名の罵詈雑言のフラッシュを浴びて、ひのき舞台と書いて叩き台と読むような処刑台に送り込まれること間違い無いやんと思ったんだと。でも違ったらしい。彼を採用した人事がやたらにそういうの熱心だったらしく、電話応対マニュアルらしきものを作り始めてしまったらしい。

意外な結末に拍子抜けした彼は、いよいよその使えないキャラで暴走を始めた。あいかわらず極力電話には出てないみたいだけど。

 

2. テレアポ?勘弁してくれ、何はなしていいかわからんよ

次に使えない新人に襲いかかったのは「テレアポやれ圧力」だ。これは本当に困ったらしい。知ってる奴ならともかく知らない奴の電話で、しかも営業の電話とか相手がまともに対応してくれるわけないやん。しかも彼の会社はどっかの会社からテレアポとか電話による営業があっても、それらを一切拒否してるんだと。そんなのおかまいなしだ、自分たちはガッツリまじでテレアポやるよなんて風潮。そんな状況でさ、深海に放り込まれたときに感じるレベルの「テレアポやれ圧力」が自分を窒息させるなんて理解できないんだと。矛盾してるんだと。

だから「電話応対」の件で芽を出したその勢いにまかせて、

「いやー、なにいっていいかわかんないっすよ。どうしたらいいんですかね」

って先輩に言ってみたらしい。そしたらあらかじめ原稿を作っておけとの指示を賜った。そんで彼はいつものようにチンタラと原稿作成をやっていた。シロアリにアマゾンを横断させる無茶を演じていたそうだ。そしたらね、先輩がやっぱり「テレアポやれ圧力」加えてくるんだって。彼の真価と進化が問われた瞬間ね。

「いやー、先輩のような話し方ができればいいんですけどねえ。どうも自信がないんすよね。もうちょっと考えますね、あーどうしよっかなあああ」

面倒見てる先輩もそろそろきつくなってきたらしい。だって新人が働かないのって一部はその先輩の責任だって捉えられるもんね。しかもこうも開き直られたら、叱っても圧を加えても動かないんだから、批判の矛先は先輩にも向けられつつあるよね。

「わかった、俺がテレアポのスクリプト作るわ。おれがいままでやってきていい感じだったのまとめるわ。だから今度こそはまじでやらないと殺す」

ちょいとばかし脚色はあるかもしれない。けどもまじでその先輩、「使えない奴」でも「ちゃんと使えるマニュアル」ってかテレアポの原稿を用意してくれたんだとさ。

 

ところで「ベンチャー」とか若い会社って業務の仕組みとかコツみたいなのが会社に行き渡ってないのが一般的じゃん。いつだかフランス革命の前夜に平民たちを扇動した人がいたよね。「第三民分とは何か。すべてである」的な。たぶんベンチャーとかの忙しさってフランス革命の地響きが道路の向こう側に控えてるってくらいのバタバタ具合ってか噴火寸前みたいなんだろうね。「お前の仕事は何か。すべてである。」

 

話がそれたね、そんなこんなで先輩はやっぱり要領良く仕上げたんだって、テレアポマニュアル。「ついに完成してしまった…ああ、呪うべきは我が身を覆うこの煉獄か地獄か」と言い残して彼はテレアポを始めたのだそうだ。アーメン。

 

ところがこのマニュアルとやら、先輩がまじで本気で作ったらしく、なんかそれなりにアポが取れるらしいんだ。そりゃ失敗することもあったらしいし、商材とか対象者とかの運もあるんだろうけど。だけどテレアポなれてきて結果出てきて、彼自信の姿勢とか考え方も妙な変化を見せたらしい。そこまでくるともはや使えないキャラをこれ以上演じてるのがきつくなったらしい。

 

まとめ

これ以上は「本当に開眼しちゃった意識高い若手」の美談になっちゃうからこの辺で。俺みたいなチャランポランにはもはやわからん。話聞いてて脂汗かいたわ。

さて、つまるところ彼がやったのは3つ。

  1. あまりのやる気のなさが逆に周囲を動かした
  2. パフォーマンスの再現性豊かなマニュアルを作成させた
  3. 自分のパフォーマンスすら変えてしまった

そんなこんなでいまじゃ彼は「真の社畜」となってしまった。

 

飲みの席だったんだ、彼と久しぶりに会ってこの話を聞いたのは。

テーブルをはさんで向こう側に座った彼だったけど、目の前のテーブルにはやたらビール瓶だのジョッキだのがそのままに並んでいた。このビール瓶やらジョッキは俺には空けられない量だ。俺は酒に弱い。だから彼はひとりでかなりの数を空けたんだろうな。でもなんだろ。酒の弱さは割り切っていた。でも、行き場のないやるせなさがさ、突然思いつかせた奇行なんだ。目の前の瓶やらジョッキなんか、両手を思い切り振りかざして払いのけたくなったよ。なんでかは分からない。

 

そしてテーブル挟んで向かいの俺にこんなこと言い返してきたらどうしよう。「これから会社で消耗すんの?」って彼に言われたらどうしよう。

いや、こう言ってやろう。

 

「思いついたままに吐いてくる。」