東京フルスロットル

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「おもちゃ」に成り下がったブルマーの消息と離婚率についての考察

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あなたはブルマーを履いたことがありますか?

 

この質問に対していわゆるゆとり世代の人々の多くがNoを、それ以前の世代の人々はYesと答えるでしょう。残念ながら男性諸君はお呼びでありませんので悪しからず。今日はこのブルマーと日本の離婚率について見てましょう。ブルマーが教育現場から淘汰された代わりに、「離婚」というネガティブワードがじわりじわりと存在感を増してきたそうです。

   

 

2011年頃でしょうか。当時受験生であった私がもっとも惹きつけられたテレビ番組がありました。その番組の主題は『ブルマーの社会学』なるものであったと記憶しています。(番組名:ジョージ・ポットマンの平成史

なぜ興味を惹かれたかというと、ブルマーの普及率の低下と離婚率の上昇が、なかなか無視できないほどの相関性があると、一外国人社会学者がテレビで唱えていたからです。

今日は①件のテレビ番組の概要を押さえ、②日本のアニメキャラたちのブルマー着用状況にほんのちょっとふれ、③The Characteristics of Clothing Preferences of Elementary School Girls(Grades 3 to 6)という報告書での児童へのアンケートをおさらいして、ブルマーの栄子盛衰と我国の離婚状況を考えていきましょう。5000字程度の文量ですので、漫画のくだりとかアンケートなんてどうでもいい、結論だけ知りたいという方は「本当にブルマーは離婚率の上昇と関係があるのか?」および「まとめと考察」からご覧ください。

ブルマーに関する番組のちょっと刺激的な内容

端的に番組の内容を振り返ると以下のようになります。

 

  • 高度経済成長期に教育現場にブルマーが導入されはじめる
  • 思春期の女の子たちにとっては生理などの事情から一部は歓迎された
  • その一方で思春期における体形の変化という側面で一部は嫌悪された
  • 不幸にもブルマーが性的趣向の対象として認知されはじめた
  • ブルマーが徐々に姿を消していくと同時に日本の離婚率が上昇
  • ブルマー普及率と離婚率の推移から現代日本の新たな潮流を考察

このような具合です。東京オリンピック頃にはブルマーが導入されはじめ、女子の体操着として一定の地位を占めるにいたります。女子バレー日本代表チームが「東洋の魔女」なんて騒がれていた時代です。現在も当時のVTRで彼女らの勇姿がたびたび映し出されていますが、彼女らが履いていたものがまさにブルマーです。

そうやって全国に普及したブルマは、思春期の女子生徒にとっては大いに羞恥心を刺激するものでありました。太ももの大半があらわになっているだけでなく、個人によっては臀部の大きさやパンツのラインが浮き上がってしまうため、それを気にする女子生徒は少なくなかったことでしょう。さらに現代のアダルトコンテンツにもあるように、こうしたブルマーが男性にとってのあらたなフェティシズムを形成してしまいました。実際に女子生徒の盗撮等も社会問題となり、それもまた各方面からの糾弾によりブルマーが教育現場から姿を消していった理由の一つです。

それだけで番組は終わりませんでした。なんと、ブルマーを通して現代日本の離婚率について驚くべき考察を繰り広げたのです。番組内ではブルマー普及率と日本の離婚率の推移に負の相関性が見られるとした上で、これをもとに「現代日本では高度経済成長期に比べて【我慢】をしなくて済むようになり、忍耐力が下がった。ゆえに離婚率の上昇は、女子生徒が嫌で嫌で仕方なかったブルマーたちが淘汰されていくタイミングと一致しているようである。

言い換えれば「抑圧を受けやすい女性が徐々に解放されていき、女子児童・生徒にとって羞恥心の裏返しであったブルマーも次第に姿を消していった。解放された女性は社会からの要請ともいえる結婚生活に対して、より自由に終止符を打ちうる状況が用意されていった」なんてとれます。個人的にはこのメッセージを抽出するにはちょっと根拠に乏しいのかな、なんて思えなくもありません。そもそも明治時代の家制度やら社会的要請にこそ端を発するのではないでしょうか。

1960年代から1990年代のアニメや漫画のブルマー状況

ここいらで漫画に登場する生徒たちのブルマ着用状況にも注目してみましょう。

さて『ドラえもん』に登場している「しずかちゃん」は、作中の体育の授業時等ではどのように描かれていたでしょうか?

『ドラえもん』は1969年に小学館での連載が始まった作品。1992年生まれの僕ですら作中の「しずかちゃん」が体育の授業でどんな格好をしていたのか(ブルマーを履いていた)のは記憶しています。

他にも以下のような作品があげられます。

  • ひみつのアッコちゃん
  • 巨人の星
  • アタックNo.1
  • ゲゲゲの鬼太郎

 これらの中でもっとも容易に確認可能なのがアタックNo.1です。「だって涙がでちゃう。女の子だもん。」のフレーズはあまりに有名です。いまやパチンコ界隈においてもじゃんじゃか世の中の男性陣の涙をも誘っているであろう現在を考えればそのフレーズの後世に対する影響力は凄まじい…。話がそれましたが、ぜひとも「アタックNo.1」で画像検索をかけてみてください。当然ながらブルマだらけです。

他にも1970年代の『うる星やつら』『生徒諸君!』を始めとした学園漫画の類も注目です。(画像検索は同人誌と思しきもの多数) ちなみに国民的アニメであった『エースを狙え!』も70年代に生まれましたね。

ところがこれも2000年代に入れば一気に姿を消しているのがわかります。2000年代初頭、いろんな方面から注目を浴びた漫画『テニスの王子様』に登場する女子生徒もやはりブルマを着用しているのでしょうか?この名作を画像検索で調べてみても同人ものばかり出てきて確認が大変でした。せひ漫画をご覧になって確かめてみましょう。他にも日本の学園物漫画が、ブルマー史を概観するうえでの貴重な資料のように思えることでしょう。

数字と文書で見るブルマーへの嫌悪感

ここまでブルマーをめぐるテレビ番組やアニメの状況について見てきました。そろそろ実際に公開されている学術文書も引き合いにブルマーに関する実態調査も見てみましょう。

The Characteristics of Clothing Preferences of Elementary School Girls(Grades 3 to 6) Naoe SUZUKI and Nobuko OKADA Bunka Women's University, Tokyo

という1999年のレポートでは小学生3年生から6年生の女子に対するアンケート集計結果において以下のような記述があります。

ブルマーのすき嫌いについてみると,ブルマーが好きと回答する人は3年生 では24.5%を占めるが, 4年生では12.4%に, 6年生では3.4%と激減する. 一 方, 嫌いと回答した人は, 3年生では21%なのに対し, 6年生は約50%と増加 し, 3年・4年生間, 5年・6年生間で0.1%以下の危険率で有意差がみられた. 学年が進むにつれて体操服のブルマーを嫌う傾向が強まることが明らかになった.

このレポートは基本的にブルマーの着用を義務付けている教育機関でのアンケートで、女子小学生の衣生活に対する意識を調査したものです。

アンケート結果にあるように、思春期に差し掛かる児童が増える高学年においては、ブルマー着用を嫌がる女子児童が増えるという結果を明らかにしています。その一方でブルマーの着用に一定の利便性がある点も考察されています。以下は生理時にどのような衣服を選択するかという文脈でのアンケート結果です。(登校時にブルマーを着用する児童がいる模様)

ブ ルマーを着用する人が5年生では 8.6%だったものが, 6年生では0.1%以下の危険率で有意に増加し31.8%を占める. 高学年になるにつれブルマーが体操服としては好まれなくなるが,生理時には濃い色で安心という理由で活用されている.

 このように、思春期における体の変化に対してブルマーが羞恥心を刺激する点で嫌厭される傾向が強かったものの、生理時の不慮の事態に備えてブルマーの着用に利点を感じている児童も少なからず存在していたとわかります。

   

他にも、ブルマーに代わって「ハーフパンツ」が教育現場で導入されるようになった背景として、1993年にプロサッカーリーグであるJリーグの創設も一役買ったとする主張もあります。ハーフパンツの機能性自体もさることながら、ハーフパンツに「スパッツ」という重ね穿きスタイルがテレビを通して認知度を高めていったのです。その結果としてブルマー以外の選択肢もいよいよ大々的に検討され、ブルマーの是非についての見直しにもつながっていったのです。

ブルマーの現状と来歴|ユニフォーム ぽけっと(第七話)

また、ブルマーへの抗議も一部地域で発生するだけでなく、新聞の投書にもブルマーへの抗議が行われたとされています。(wikipedia)いよいよブルマーが現代史の表舞台から降りていくきっかけとなりました。

1987年、名古屋西高校で女子生徒の体操着として新たにブルマーを導入したところ、生徒による反対運動が起こった。

中島聡『ブルマーはなぜ消えたのか - セクハラと心の傷の文化を問う』

本当にブルマーは離婚率の上昇と関係があるのか?

僕が先ほどの番組で見たときは、なるほど、たしかに1960年代からの離婚率の上昇と、ブルマの普及率の低下(番組で公開されたものは入手できませんでした)には部分的な相関性があるような気がしました。しかし以下の厚生労働省発表の離婚件数及び離婚率の年次推移を見ると、その主張は疑わしく思えてきます。

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ブルマが普及していったとされる1960年代(昭和40年前後)から、徐々に姿を消し始めた1990年代の離婚率は、昭和60年から平成2年を除けば一貫して増加傾向にあります。

いやいや、「ブルマーが女性を抑圧する象徴のひとつ」だったとしても、ブルマーの普及と離婚率は、ブルマーが姿を消した始めたされる90年代まではおよそ負の相関性が見出しにくいです。というのも1960年代からブルマーは普及率を伸ばしていったとしても離婚率も同様にその数値を伸ばしていったからです。その後どこかのタイミングで擬似的な相関を見せたとしても、その時点で2つの変数同士の関わりは相関とは言い難いことでしょう。そしてブルマーは現代史の一事象として社会の教科書に落とし込まれていくだけの道をたどるのです。ただしブルマーの普及率に関するデータがないのが辛い…。

 まとめと考察

番組公表のデータが取れなかったのが説得力を欠きかねませんが、少なくともブルマーと離婚の関係については強力なメッセージを抽出するほどではないのかなって思います。そもそも離婚について考えるのならば、明治維新後にどのような民法が制定され、それに基づいて「家制度」なるものがどのように営まれたのかが重要になるんじゃないでしょうか。現代では考えられませんが「家長の不在」は欠損家族として一部の家庭を社会的に不利な状況に置いていました。実際に森鴎外の『舞姫』の主人公(鴎外自身)の家庭環境においても、父親の不在が鴎外に「立身出世」の必要性を実感させていますし。

とはいえブルマーを通して現代史の一事象を考察するという試みは僕にとって非常に興味深いものであったのは間違いありません。また、東京オリンピックがブルマーの普及を支えた点と、Jリーグ創設に伴いブルマーがハーフパンツに取って代わられた点との共通点にテレビの存在が挙げられます。憧れ・羨望の対象としてテレビに映し出されたオリンピック選手のブルマー姿が、Jリーガーたちが履いていたハーフパンツに替わられるのですからなかなかの皮肉です。

 

ちなみにこの記事はカフェのカウンター席で執筆していました。「コンテンツとしてのブルマー」には一切関心はありませんが、執筆時、僕のPCにはいくつもの「ブルマー画像」が展開されていたのは致し方なし。おそらくあのときカフェに居合わせて僕の近くを通りがかった人々にとって、めちゃくちゃな変態が公共の場にもかかわらず頭とPCをブルマでいっぱいにしてやがる!とお考えだったことでしょう。そんな彼らにも僕の記事が一つの弁解書としてリーチすることを心の底から願っております。みなさん、明けましておめでとうございます。